対談コラムプログラミング教育に関するお悩みや、今取り組むべきことなどをご紹介。

プログラミング教育最前線

PROGRAMMING EDUCATION

始まっている日本の『プログラミング教育』の今

第1回始まっている日本の『プログラミング教育』の今
〜 筑波大学附属小学校 鷲見辰美先生に聴く

後編「アメリカのSTEM教育に触れて見えた、日本の目指すべき方向性」

今年6月、アメリカ・ボストンでレゴ エデュケーション・カンファレンスが開催された。
筑波大学附属小学校の鷲見辰美先生もこれに招かれ、大いに刺激を受けて来られたようだ。

「全体の感想としては、講演と体験型ワークショップの組み合わせがとても良かったことでした。特に会場となったタフツ大学の先生が提案した『初等教育でもっと代数をとりいれましょう』といった話は印象に残っています。単なる計算方法に走るのではなく、計算の意味を考えるためにどうしていくか、発達段階に沿って考えるという内容は、とても役立つと感じました。私自身、理科では社会への汎用性を考えながら教えることがありますが、算数にもそれは必要だと感じました」

「足し算というものそのものの意味を考える。一般化する。それを社会で汎用する能力を育てる。社会にいかに役立つか、自分たちにどういうことができるか、そこまでが単に算数で終わらない、STEMの概念ですね」

6個のブロック

実際にレゴエデュケーションの教材を用いたワークショップも行われました。

「6個のブロックを使って、緑のブロックをupする、downする、というように動かすゲームのようなことをやりながら、そこで英語の前置詞などの言葉自体も覚えることができる。そんな高度な教材でなくても、いろんなことができるということをレゴブロックは示せたと思います」

アメリカでの初等教育の授業形態なども、鷲見先生の好奇心を刺激したようだ。

「アメリカ式は、子どもたちが床に座っていて、手を挙げた子どもを指していくというスタイル。その子がいいことを言うとそれが中心に授業が進んでいきます。ただこれだと、全員が理解していないというケースも多いから、先生がもう少し言葉を投げかけてあげたらいいとは思いました。子どもが自由に動き回れるから、これはこれで面白いのですが」

グループワークの多い日本のやり方にも、いい面はたくさんあると鷲見先生は気づいたそう。

レゴ エデュケーション・カンファレンスで、最も激しく行き交った言葉がSTEM(ステム、と発音される)だった。
Science, Technology, Engineering and Mathematics、 つまり科学、技術、工学、数学の教育分野を総括する言葉で、それらが切り離された科目であるべきではなく、相互の発想をもった総合的な教育が行われるべきだという概念だ。

たとえば、日本での初等、中等教育で切り離されてきたのがEngineering、エンジニアリングだろう。だから、もしSTEMを本格的に日本でやろうとする場合、エンジニアリングをどう教えていくかを避けて通れなくなる。

しかし、筑波大学附属小学校の鷲見辰美先生は、これまでの日本の教育にもSTEMの概念は存在していたと言う。

「たとえば社会という教科で『環境』という問題を考えるときに、自分たちに何ができるかと考えたとき、科学の側面、技術の側面、機械工学の側面、数学の側面と、いろんな側面から見ているでしょう。これがSTEMが一般化された形だと思うのです。つまり、日本ではすでに統合的に問題解決をするという教育をとりわけここ10年はやってきているのです。むしろ、アメリカでは掛け声だけでまだまだこれから手法が生まれていく段階だと思った。むしろ中国あたりはすごいですね」

LEGO Education Teacher Award 2018

鷲見先生は、そのこれまでの日本の教育を踏まえた上で、これから日本で始まるプログラミング教育にこのエンジニアリングを含めたSTEMの概念は不可欠だと考えている。そして、それが一般化していくものであることが大切だと語る。

「人がものを理解するために必要なのは、知識と体験と意味の3つです。この3つが使える知識となることの三要素なのです。日本でもSTEMの必要性が改めて理解され、プログラミング教育に生かされていくことが望ましい。教師の皆さんには日本でこれまでやってきた統合的な教育に自信をもってもらい、そこに何を具体的に加えていくのか、具体的にどうカリキュラムを組むかを論じていく段階に入っています」

2020年、プログラミングが小学校で必修化になることはもう決定している。英語や道徳と並び、習得後、すぐに一般化できる学力として、期待は高い。

鷲見先生は言う。

「プログラミングは、使える知識を学ぶことができる。論理的思考ができる。試行錯誤ができる。対話ができる。そして、創造ができる。アートもできる。そういう自由な教材だという認識をもってもらいたい。そして、ほかの科目よりもはるかに習得は簡単だと思います」

小林道夫先生と鷲見辰美先生

これまで、小学校の教員たちが家庭科のミシンや音楽のピアノなどの習得に苦しんだようなことは、プログラミングにはない。

「必要なのは、みんなでぱっとスマホで意見をオンライン上にあげている画面を見ながら議論できるとか、資料がぱっとタブレットで見られるとか、そういうオンライン環境ですね。そういう体制を全国に早急に作る必要があります」

では今、日本の小学校のICT環境はどうなっているのか。
またプログラミング導入へ向け、文科省と各自治体の間でどんなやりとりがあり、学校はどう動いているのか。
次回はそれを徹底レポートしよう。