特集記事プログラミング教育に関するお悩みや、今取り組むべきことなどをご紹介。

プログラミング教育最前線

PROGRAMMING EDUCATION

立川市立第八小学校 小学5年生 学校裁量の時間

立川市立第八小学校
小学5年生 学校裁量の時間

指導者:若林 聡子 先生宇宙エレベーターロボットを作ろう
教材:教育版レゴ®マインドストーム®EV3 宇宙エレベーター実験キット
EV3

今回取り上げるEV3は小学校高学年から中学、高校生を対象としたSTEAM教材だ。プログラムの記述は直感的に操作の可能なレゴ社オリジナルのソフトウェアを使うため、初心者でも取り組みやすい。親しみやすいレゴのパーツを使うことで、コンピュータや情報通信ネットワークを使った学習活動を充実させることができ、発達段階に応じた情報活用能力を養うことができる。
本授業では、プログラムを使って昇降機を動作させることができる「宇宙エレベーター実験キット(EV3)」を導入。

命令を実行すると組み立てたハードウェアがすぐに動作をするため、動きを確認しながら試行錯誤をする習慣を養うことができる。コンピュータにどのように命令をして動作させるかを考えるための力「論理的思考力」を自然と身につけることができるのが特徴だ。

宇宙エレベーターとは
宇宙エレベーター

地球から約3万6千km上空にある宇宙ステーションまでケーブルでつなぎ、電車に乗るように気軽に人や物を宇宙まで運ぶ夢の乗り物。宇宙開発の主役であるロケットには墜落や爆発の危険が伴う一方で、宇宙エレベーターは開発や地球環境への負担が少ないため、実現すれば宇宙開発が大きく飛躍する、と言われている。

1979年にSF作家のアーサー.C.クラークが小説『楽園の泉』を発表し、宇宙エレベーターという概念で広く知られるようになった。2012年には株式会社大林組が「2050年に宇宙エレベーターを実現させる」と発表し世界を驚かせるなど、今では実現可能な研究プロジェクトとして世界的に動き始め、技術開発のための競技コンテストが日本、アメリカ、ドイツなどで行われている。

日本では、2013年に競技会がスタートし、文部科学省の後援をはじめ、さまざまな企業や学校の協力を得て、全国大会の開催や、世界大会の実現に向けて取り組んでいる。競技会では、プログラミングロボット教材のマインドストームEV3を使って宇宙エレベーターロボットを製作し、昇降実験を行いながら物資や人を運ぶときの問題点、安全について考えることを目的としている。2019年は第7回を迎え、予選には625人が参加するなど、デジタルネイティブ世代の若き才能たちがその創造性を存分に発揮して成長できる競技として注目が集まっている。

※ 宇宙エレベーター協会HPより

授業前の様子
授業風景

「おはようございます!」と元気にあいさつして教室に入る子どもたち。教室に準備されているEV3に駆け寄り、笑顔で覗き込んでから着席する児童がいるなど、授業を楽しみにしている様子が伝わってきた。

教室には4名で1グループをつくり、9グループ総勢36名程度の児童が着席。今日はこれまで試行錯誤しながらつくってきた宇宙エレベーターロボットを完成させ、それぞれの工夫を発表し合う仕上げの授業だ。立川市立第八小学校は宇宙エレベーターロボット競技会の主催する全国大会で3位に入賞するほどの出場常連校だ。授業前には「めあて」が書かれたプリントが配布され、各チームが製作してきたロボットをすぐに動かせる状態に準備してあった。

「めあて」と授業の流れを確認(5分間)
授業風景

まずは配布されているプリントをもとに、授業の流れを確認した。

  1. 宇宙エレベーターロボットの準備
  2. 発表1(2班分)
  3. ロボット製作(発表を聞き、ほかのチームの工夫を取り入れるか検討)
  4. 発表と振り返り
ロボットの準備(5分間)
授業風景

「では、ロボットの準備を始めてください」と担任の先生の指示があると子どもたちは足早にEV3に駆け寄り、それぞれの班に持ち帰った。

班内では、それぞれが役割を分担し、協力しながら準備を進めていた。ロボットを組み立てる子、必要なパーツを探す子、プログラムを記述する子、分からないことをほかのチームに聞きに行く子など、役割も固定的ではなく流動的だ。

書いてあるプログラムの分からないところをお互いに確認すると、「あぁ、そういう仕組みか!」と理解が進む子もいれば、「あれ?あれ?」と試行錯誤を繰り返す子もいた。班のメンバーのそれぞれが主体的に関わり合うための対話が自然に生まれている様子がみてとれた。

発表(2班分)※7班と8班(5分間)
授業風景

先生からの声掛けをきっかけに発表者の2つの班が集められる。ほかのチームはしっかり聞くように指導があった。発表チームの緊張をほぐすため「集まって座ったら動かない、話さない、でも息はしていいからね」とユーモアも混じえて進行した。

発表は、自分たちなりの工夫、苦労したところ、ほかの班には無い特徴、プログラミングの内容などを順番に発表していった。ひとりが話すのではなくメンバー全員が発表するような工夫も見てとれた。


  1. 8班の発表
  2. 授業風景

    ピンポン玉を入れるカゴ部分がロボット本体に引っ掛かっていたのを改善した。玉がカゴからこぼれないようにして、ロボットが上昇する際にセンサーとカゴが同時に動くように工夫したことで、5分間に52個のピンポン玉を運ぶことに成功した。プログラミングの特徴は、センサーが20cmのところまでくるとロボットが起き上がるようにしたこと。この工夫により玉を安定して置くことができるようになった。ほかにも、玉を何度もとれるようにループ(繰り返し)の処理を入れる工夫もあった。


  3. 7班の発表
  4. 授業風景

    プログラムを実行するとカゴが下がるようになっていること、動作を開始するためのスイッチと、動作を止めるためのスイッチの2種類のセンサーを使っていることを発表した。玉をのせる部分の組み立てとカゴの組み立ての自由度が高かったため、難しく感じたことや、【上昇する】【玉を置く】【戻る】の一連の動作を考えてプログラムを書くのに苦労したことを発表した。

ロボット製作(10分間)
授業風景

聞いたばかりの発表を参考にしてロボット製作に改良を加える時間をとった。自分たちの班のメンバー以外にロボットの仕組みを説明したり、タッチセンサーを使うことを検討してみたり、班ごとに相談して試行錯誤する時間だ。「あっ!」「イエーイ!(歓声)」「ここ長さ変えてみようか」、いろいろ試している様子が聞こえてくる。

アイディアを思いつくための想像力、そして思いついたことを言葉にして的確にメンバーに伝える力、仮説をたて、実行してみて改善する実行力、これらの改善サイクルを含めた思考力と行動力は社会に出たときにこそ力を発揮するはずだ。「3個までならできるね」「2個落ちるね、なんでだろう?」「◯◯ちゃんに聞いてみようか」、こんな声から、子どもたちが自主的に学び、探究している様子が伝わってきた。

発表と振り返り(10分間)
授業風景

どんなところを改善していったか、班ごとに発表する時間をとり、本日の振り返りを行った。
ここからは個人ワーク、「振り返りシート」を使って、本時で実施したロボット競技会カリキュラムを活用した学習について振り返った。

  1. 宇宙エレベーターロボットを発表しよう
  2. グループの発表をよく聞いて良いプログラミングを考えよう

積極的に取り組んだことがよく伝わる振り返りの声が多かったので以下にご紹介したい。自分たちの班だけの活動内容だけでなく、周囲の班の成功や失敗をよく観察し、情報として活用することで問題を発見し、解決できることを実感できていた。

  • 他の班のアレンジ(工夫)を見ることで参考になった
  • 他の班でうまくいっているものを真似することでうまくいくことが分かった。ひとりではできなくても協力することで解決できたことがあった
  • 思ったとおりに動くとうれしかった
  • 最初は大変でうまくいかなかったところもあったけど工夫して解決できた
先生より
授業風景

今回は特にみんなが教え合って学んでいました。ほかのグループを自由に見に行って、良いところを取り入れていろいろ変えていく。時間がいくらあっても足りないぐらい充実していました。まだまだ続けてやってみたい、という児童たちの気持ちが伝わってきました。慣れるのに少し時間のかかる子もいましたが、全員がしっかり参加できる学習になったのはEV3と宇宙エレベーターの仕組みがあったからだと思います。