特集記事プログラミング教育に関するお悩みや、今取り組むべきことなどをご紹介。

プログラミング教育最前線

PROGRAMMING EDUCATION

板橋区立成増ヶ丘小学校 小学6年生 総合的な学習

板橋区立成増ヶ丘小学校
小学6年生 総合的な学習

指導者:成田 真里 先生未来につながるプログラミング
~SDGsを手がかりに~
授業前の様子
授業風景

体育館には3人から4人一組の10グループの児童が集まった。それぞれの班のリーダーが中心となり、ホワイトボードやパソコン、SPIKE™プライム本体など、発表用の舞台を準備した。プログラムやロボットの工夫について書かれたホワイトボードには、色とりどりの模造紙を使ったり、フローチャートを活用したりするなど、分かりやすく説明するための工夫がされていることがひと目で分かった。

「めあて」の確認(5分間)
授業風景

事前学習として調べてきた内容を5つに分解し、目指すゴールを决めたことを振り返った。

  1. 現在とられている対策
  2. 原因・解決すべき課題・改善案
  3. 目指すゴール
  4. ロボットの工夫・プログラミングの工夫
  5. 今後の課題

今日は発表を通して、ロボットの工夫・プログラミングの工夫を自分たちの言葉で説明をする。残った課題についてもしっかり伝えることで、プログラミングを未来につなげていく。
発表者は第1回、第2回、第3回と分担が決まっており、聞くメンバーもそれぞれ決まった班の位置に移動した。

研究成果の発表(20分間)
授業風景

自分たちで調べた社会課題について、その原因と対策、目指すべきゴール、プログラミングの工夫など、「めあて」で確認した5つのポイントをしっかりと押さえていた。感じた課題や目指すゴールが同じでも、各班が考えた対策とロボットの形状に同じものはなく、児童たちの個性が際立っていた。

課題や目指すゴールと工夫など、簡単にまとめたものをご紹介したい。


課題 目指すゴール プログラミングの工夫
01.
発展途上国の水、食、健康が不完全である
発展途上国の水、食、健康をロボットで解決し生活を豊かにする カラーセンサー、距離センサーを使い、色を感知するようにした
02.
電気の無駄遣いや消し忘れが多くエネルギーが足りない
みんなで電気をつくる。人感センサーで電気を自動でオンオフできるようにする 誰にでも分かりやすく、簡単に組み立てられるようにした
03.
水&海について考えよう ~ゴミを減らそう~
ゴミを減らし水や海を豊かにする ゴミをつかむためのアームを作った
04.
世界の環境が悪く生き物に影響をしている
生き物が安心して暮らせるようにする 2つのセンサーを使い、よい方をとった
05.
町の点字ブロック凸凹を無くして、住みやすい町をつくろう
色を見分けられるロボットを作る、音声で伝えるようにする 感知した色ごとに動きを変えた
06.
水不足と水質汚染の問題を解決する
水不足と水質汚染を解決するロボットを作る なるべく少ないパーツを使って組み立て、水の中でも動けるようにした
07.
海の中のゴミを無くして、海の生物が影響なく暮らせるようにする
人間の代わりに海に潜ってゴミを取るロボットをつくる カラーセンサーでゴミを感知し、ゴミ置き場まで行ける
08.
海からゴミを無くし、魚たちの生活を豊かにしていく
海からゴミを取り除くロボットを作る ロボットがいろいろな方向に動けるように調整した
09.
内戦が続く地域の人たちが貧困で苦しんでいる
地上から物資を届けるロボットを作りたい 色を感知すると止まり、しばらくすると元の場所に戻る
10.
森や森林のゴミを無くす
森や森林の中のゴミを収集場に運びゴミを無くす 進みながらアームが動くように距離センサーを使った
振り返りとまとめ(5分間)
授業風景

振り返りをする前に、10グループの中から代表を决め、みんなでその発表を見守った。発表が終わると、数名の児童たちに今日の発表の感想を共有してもらった。「私は2つのグループの発表を見ました。自分では思いつかない解決策を見つけられてよかった。時間通りに発表するのは難しかったけど、たくさんの人の前で発表する貴重な経験ができたと思う」「最後までトラブルなく発表を終えることができて安心した」などの声があった。

先生から「みんなで未来につながるプログラミングをしてきたよね?社会に貢献できるプログラミングをこれからも考えていきましょう」と児童たちに伝え、授業を終えた。


インタビュー:成田 真里 先生(6年2組)
成田 真里 先生

SPIKE™プライムを使ってみた感想をお願いします。

WeDo2.0は命令が固定されているため、子どもたちの思い通りにいかない点があったのですが、SPIKE™プライムはもっと自由にプログラムすることができました。子どもたちからも「自分たちの願いが実現できた」「想像していたよりさらによいものをつくることができた」という感想があり、SPIKE™プライムを使ってよかったと思っています。

子どもたちがかなり使いこなしているように見えました。学習にはどれくらいの時間がかかりましたか。

6年生は卒業シーズンも控えているため忙しく、週2時間しかできないこともありました。結局、総合的な学習の時間を計20時間程度使って、調べものから、ロボットの組み立てまで一通りやることができました。

ほかの学校でも総合的な学習の時間を使えば同じようにできるでしょうか。

成増ヶ丘小学校が特別というわけではなく、ほかの学校でも同様にできると思います。私はまだ教員になって5年目ですので、同じように経験の少ない人でも大丈夫だと思います。やるべきことを精査して授業を展開すれば、子どもたちも集中して取り組むことができます。子どもたちの頑張りが、今日の発表につながったと思います。

5年生のときにScratchを経験した背景があるから、SPIKE™プライムも比較的簡単に取り組むことができたのでしょうか。

そうですね。ロボットは新しい経験ですが、Scratchベースなので安心感がありました。子どもたちも「見たことあるやり方だね」「これとこれをくっつけて命令しよう」と理解が早かったように思います。

最後に、レゴを使ってよかったなと思う点はありますか。

子ども同士の学びもありましたけど、東京都プログラミング教育推進校ということで外部に発信するために教員同士が学びあうこともできました。教員が協力することができたのもよかったと思います。

インタビュー:西谷 秀幸 校長
西谷 秀幸 校長

SPIKE™プライムを絶対に使いたいとのご希望でしたが、なぜSPIKE™プライムにこだわりがあったのでしょうか。

EV3はFLL(ファースト・レゴ・リーグ、国際的なロボットコンテスト)に出場する際に使っていたのですが、授業で使うのは少し難しいなと思っていました。逆にWeDo2.0はモーターが1つしかなく、複雑な動きもできないので、高学年には物足りないとの意見もあり、何かよい教材はないかと探していたらSPIKE™プライムの発売を知ったんです。低学年でPETSをやって、中学年でWeDo2.0に取り組む。平行してScratchも始めて、高学年でSPIKE™プライムに取り組めば、プログラミング教育が全てつながる…。まさにこれだと思いました。

EV3とSPIKE™プライムは基本的なモーターやセンサーは類似していますが、決定的な違いはなんだったのでしょうか。

正直にいうと、最初はScratchの方がEV3のブロックよりも簡単だと思っていたんです。しかし、実際にSPIKE™プライムを動かしてみると、Scratchの方が難しいのではないか、と思うことも多々ありました。
それでも、これからしばらくの間は、Scratchがプログラミング言語の中心になるだろうと思ったこと、中学年からScratchを経験すれば、系統的にもつながると思ったことが大きな理由です。

今後も5年生、6年生の教材としてSPIKE™プライムを使っていく計画でしょうか。

今年度の経験をベースにしながら、来年度以降はさらに検討していくつもりです。今回は5年生でロボットを動かして、6年生で調べものや発表をしました。やはり物を動かすことはこれからも子どもたちに経験させたいですね。3年生くらいから積み重ねて、6年生になったときにテーマを持って振り返りをするなど、STEAM教育を超えた学びができる日がくるのではないかと思います。

レゴを使ったプログラミング教材は、公立の小学校において使いやすいでしょうか。

個人的には、子どもたちにとってとてもよい教材だと思っています。FLLの大会でもそうですけど、同じ課題でも、ハードとソフトの両方をそれぞれが違う方法で、違う戦略を考えることができるのがレゴ。しかも、バランスや構造的なことも考えないとうまくいかない。世の中の課題にも通じるところがありますよね。予算的な問題さえ解決できれば、公立小学校での授業の組立や提案にも有効だと思います。