特集記事プログラミング教育に関するお悩みや、今取り組むべきことなどをご紹介。

プログラミング教育最前線

PROGRAMMING EDUCATION

相模原市立清新中学校 中学2年生 技術・家庭科

相模原市立清新中学校
中学2年生 技術・家庭科
「情報の技術:計測・制御のプログラミングによる問題の解決」

指導者:須藤 雄紀 先生収穫作業を自動化するロボットを作ってみようクラウドデータの天気予報で判断しよう!(5/8時間目)
授業前の様子
授業風景

PC教室に集まった生徒たちは、一人ずつノートパソコンの前に着席。作業用の机の上には、生徒たちが組み立てたSPIKE™プライムのロボットとタブレット、収穫用のトマトに見立てた空き箱が準備されていた。2~3名のペアごとに1台のSPIKE™プライムが割り振られており、教室には約30名の生徒が集まった。タブレットにはこれまでの授業で作成したScratchのプログラムがすでに入力され、すぐに使うことができる状態になっていた。

導入(5分間)

授業の目標は社会や産業にある課題を見つけて、解決するための技術を学ぶこと。清新中学校の2年生では農業に関する課題に注目し、野菜の栽培や収穫を自動化することで高齢化による労働者不足を解決しようと取り組んだ。

最初に、農業の現場で実用化されている野菜の収穫ロボットの動画を視聴して、完成のイメージを確認した。全8時間の授業を通して生徒たちがプログラムするのは、赤く色づいたトマトを識別し、天気のいい日は作業に出発、機械アームで収穫するロボットだ。これまでの授業では基本となるプログラムを制作した。今回はさらに修正して①収穫する作物に近づいて作物の色を計測する②クラウドデータを利用して天候に合わせて収穫作業を行う――プログラムをつくる。

班ごとの話し合いとプログラミング(35分間)
授業風景

実際にロボットを動かしてプログラムを確認するため、7人程度のグループに分かれて作業用の机に移動。プログラム用のタブレットとロボットは1~3人に1台が割り当てられ共同で使用した。

まずは、前回までに作った基本のプログラムを改良し、収穫する作物に近づき色を識別するプログラムを作成する。「色が赤のときトマトマークをオンにする」 「色が白のとき音を鳴らす」など、カラーセンサーがトマトの色を計測したときの反応や、「距離が5センチより近いなら移動をやめる」「移動スピードを40%にする」などトマトに接近するためのプログラムをタブレットに入力した。実際にロボットを動かしてみるが、目標物の手前で止まらずにぶつかってしまったり、動きが早すぎて命令を無視したりと、生徒たちの思った通りの動作にはならない。「動きを遅くしてみよう」「確認しながら少しずつ動くようにしたらどうだろう」など、問題解決に向けて協力していた。

授業風景

先にプログラムが完成したグループの様子を見て、須藤先生は「何度やっても、きちんとトマトの前で止まるといいよね。例えば5回やってみて何回成功するか確認してみて」と声を掛ける様子があった。すべてのグループがプログラムを終えたところで、生徒たちは元の場所に戻って着席。須藤先生は「スピードを速くしたグループは?」などと挙手で生徒たちに確認をし、「誤作動をなくすために動きをゆっくりにしたグループもあるし、収穫性を高めるためにスピードを早めたグループもあるね。センサーやアクチュエータを調整することで、正確性やスピードは変えられるね」と助言をした。

次に、ネットワーク上の天気予報のデータを読み取って収穫に適した天候なのかを判断するプログラムづくりへと進んだ。須藤先生は「収穫に適した天気って晴れだよね、曇りでも大丈夫。雨だとロボットの走行に支障があるから作業はやめて、雨以外なら収穫するというプログラムをつくってみよう」と提案した。生徒たちにはワークシートが配られ、「天気の読み取り」「距離を計測」「色の計測」を書き込み、アクティビティ図を作成してから、タブレットでのプログラムづくりに取り掛かった。

    『農業に関する問題を計測・観測の技術で解決しよう!~クラウドデータの天気予報で判断しよう~』ワークシート内容
  1. 天候を判断し収穫する手順を考える
  2. 作ったプログラムを記録する
  3. 実習を振り返る
授業風景

まず、天気予報データリストの中から「Sagamihara」を選びだし、現在地に指定。天気予報の結果の表示や、作業の中止の判断、移動の命令などは、それぞれのグループで自由に話し合って決めた。指定する条件が増えたことでプログラムの難易度が上がり、「プログラムしたけど本当に動くかな」「結構、難しいね」と何度も確認しながら作業を進めていた。中には須藤先生が想定していなかった機能を使ってプログラムをするチームもあり、それぞれ自由な発想で楽しみながらプログラムづくりに取り組む様子が見えた。「傘マークとバツマークを表示させたいけど、2個同時に表示できずに点滅してしまう」というグループには、須藤先生が「LEDライト以外にも、スピーカーを使って音を鳴らしてみたらどうかな」「もう完成しているグループもあるから見に行ってもいいよ」と助言する様子もあった。

振り返りとまとめ(10分間)
授業風景

最後にワークシートを利用して工夫したこと、悩んだこと、解決したことなどを振り返った。「世の中で使われる自動制御のプログラムを考えるとしたらどんなことを大切にしたいか」という問いに、ある生徒は「今回プログラムを作ってみて、うまくいくときとうまくいかないときがあった。実際の社会で使うためには毎回正確に動くプログラムでないといけないと思いました」と感想を発表。須藤先生は「そうですね。実際に使われるシステムやプログラムには正確性や安全性が求められます。そのためにも計測・制御の技術が必要ですね、次回はロボットにアームとカゴを装着して、実際にトマトの模型を収穫してみましょう」とまとめて授業を終えた。


インタビュー:須藤 雄紀 先生
須藤 雄紀 先生

SPIKE™プライムを手にしたときの印象はどうですか。

パーツの色がきれいなのでブロックを触るようなイメージで、子どもたちが親しみをもって取り組むことができたのはよかったと思います。SPIKE™プライムアプリも使いやすいデザインで、学習プログラムが用意されていたので、センサーやアクチュエータについても簡単に把握することができました。

EV3と比較したときに違いはありますか。

クラウドデータが活用できるところが魅力的です。今回の授業では天気予報のデータを利用しましたが、今後はほかのデータも読み込めるようになるといいなと期待しています。中学校の技術の授業でも常にネットワークやIoTは意識していますので、授業に取り入れることができるのはいいですね。

今回の授業で工夫された点はありますか。

相模原市の中学校では、具体的な問題解決に取り組む学習に取り組んでいます。3年生では社会や産業のなかから課題を発見して取り組むのですが、子どもたちはどうしても身の回りの課題に注目しがちです。今回は農業をテーマに考えることができ、3年生につながる学習ができたと思います。

ブロックの組み立てやセンサーの取り扱いに難しさを感じることはありましたか。

組み立て図も分かりやすく、パーツのサイズも大きいので、子どもたちはすぐにロボットを組み立てることができました。パーツが複雑だと、授業の目的とは関係のないところに生徒の集中力や時間が取られてしまうので、仕組みが簡易的なのはいいですね。

ほかの学校でも活用するときに注意したほうがいいことはありますか。

パソコンとの相性もあるように思います。条件によっては動作が重くなってしまうこともあるので、使っていく中で学校にあった運用を見つけられるといいかなと思います。

何人ぐらいで利用するのがよさそうですか。

2人に1台あったら理想的ですが、3人でも十分取り組めると思います。全員がプログラムをつくれるようになるためには、タブレットのほかにパソコンも活用して、ロボットは1台でもプログラムはそれぞれ作ってもいいと思います。タブレットで作ったプログラムがうまくいかなかったときは、パソコンをケーブルでつないで別の生徒がつくったプログラムを共有してみるという方法もいいと思いました。

中学校の授業で活用してみていかがでしたか?

ほかの学習や教科にも応用できると思います。技術で歯車(ギア)の仕組みを学ぶときに、SPIKE™プライムを使ってモーターを回転させて力が伝わる仕組みを作っても面白そうです。理科の運動とエネルギーの授業にも活かせそうなイメージを持てました。LEDライトやプログラムで「表現する」という点で美術にも向いているかもしれません。小学校ではいろいろな教科に利用しているので、中学校でも参考にしていきたいです。